僕らの本番は
数カ月前からはじまる。
機材と一つになり、
場の空気をつくってゆく。

大学時代の経験からひろがった
映像世界への道
文系学科出身の私が、この業界に興味を持つようになったきっかけ。それは、放送サークルで音響機材に触れたこと。サークルでは、サッカーのスタジアムでBGMを流したり、マイク音量を調整したりする活動をしていたのですが、この経験から、音響や映像に携わる仕事がしたいと考えるようになっていきました。そこで、シネ・フォーカスに入社。入って気づいたのは、シネ・フォーカスの社員は、穏やかでやさしい人が多いということ。なんとなく映像業界は体育会系的なイメージをもっていたので、そのギャップに衝撃を受けました。けれど、仕事に対してはプロ意識が高く、先輩の仕事ぶりには尊敬すら覚えます。そんな先輩たちの姿勢に刺激を受けた私は、普段から機材に触れたり、本を読んだり…日々、技術を磨くのが当たり前になっていきました。

場の空気感をつくりあげる醍醐味
テクニカルスタッフのミッションは、お客様の思い描く映像演出をカタチにすること。数カ月前からお客様の窓口を担うプランナーやお客様と打ち合わせを重ね、イベントのゴールに向けて、準備を積み重ねていきます。なかでも、重要なのが機材を深く知り、綿密な準備を怠らないこと。シネ・フォーカスが保有する機材は約20,000点。そのすべてを把握することはできませんが、一つの現場でさまざまな機材を扱うため、使用する機材については理解しておく必要があります。例えば、映像を切り替える機材「スイッチャー」一つとっても、実は多種多様。コンパクトなものから大型のものまでさまざまな機種があり、それぞれ特性が異なります。カメラやPCなどとつないだときに動作するかを検証したり、投影する画面構成を考え設定したり、機材に触れて操作方法を身体に覚え込ませたり…当日に向けて準備することはたくさんあります。そうした積み重ねを経て、本番でまるで機材と一つになって思い通りに操作できたとき。映像の切り替えやオープニングVTRを流したタイミングで会場の空気がガラリと変わる瞬間には、毎回心が震えます。
T.NAGAKURA


スクリーンいっぱいに映しだされる
迫力に圧倒されて
また、大型スクリーンに鮮明な映像が出せたときの達成感も格別です。私は技術部技術1課に所属しており、主にヘルスケア業界における学会や企業イベントなどを担当しています。先日担当した製薬会社が主催するイベントでは、「スーパーワイドスクリーン」と呼ばれる横幅23mもあるスクリーンに、オープニングVTRを映し出す演出がありました。この巨大なスクリーンに映像を映しだすためには、通常より多くの時間と手間がかかります。例えば、より解像度の高い「4K映像」で映しだすためにハイエンドな機材を使う。一般的な16:9の比率とは異なる横長の映像を投影するため、動画データを作り、それに合わせて機器の詳細な設定を行う、などさまざまな作業が発生します。その分、映像がスクリーンいっぱいに映しだされ、観客を圧倒する光景をみると、この仕事の面白さややりがいを改めて実感します。

経験したことのない手術室からの中継
最近では、病院から“手術の中継”をしたことがあります。この映像は、医師たちが最新の手術技術を学び、理解を深めるためのものでした。しかし、当初は社内にその分野のノウハウがなく、自分なりに調査しながら準備を進めました。具体的には、手術の様子を映している中継映像と、内視鏡や心電図などの医療機器の映像を統合して学会会場に届けます。しかも、単に映像を送るだけでなく、手術の内容や流れを理解し、それに応じた映像を構成する知識と技術が求められました。ネットで専門用語を調べたり、手術中継を行っている他社に話を聞きに行くなどして、少しずつ知識を深めていきました。この経験を通じて強く実感したのは、私たちが提供する映像技術は、ただの記録や情報発信ではないということ。ときに、医療の進歩を支えたり、経済の発展を後押ししたりするような社会的に大きな役割を果たすことにもつながっており、その分、非常に重い責任を伴います。そうした使命を肌で感じながら、さらに技術力を磨き、チーム全体の力を引き出せる存在になりたいと考えています。